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相続に関する役立つ情報

特別受益について

 特別受益についてご説明します。ここでは実務上相続手続をできるだけ簡単にするという観点からお話します。

 相続人の中に、被相続人(亡くなった方)から生前、お金や物をもらっていたということがあります。たとえば結婚資金や大学教育などの学費、事業資金などです。このような人を特別受益者といいます。この特別受益を無視して遺産分割をすると不公平なことになりますので、その特別受益の額を相続財産にいったん戻して計算し、特別受益を受けた人はその額を差し引くという修正を行います。これが本来の特別受益の制度です。

 この方法は、家の後継ぎなど一人の人に遺産を集中させる簡便な方法として用いられることがあります。相続人間に争いがない場合、特別受益という事実はなくても特別受益証明書を交付して不動産の名義を移転したり、預貯金のブロックをまず解除するということが行われています。特別受益証明書のこのような用い方にはいろいろな意見もあるようですが、手続を早く終わらせるためによくなされます。実際は証明書の交付の際にハンコ代としていくらか支払ったり、相続手続完了時に支払うという念書を渡したりすることもあります。


 相続人に相続が発生している場合、たとえば祖父、父と順番に亡くなって、その子が祖父の相続手続きをする場合、『父が、祖父から特別受益を受けていた』旨の証明書(相続分のないことの証明書)を交付します。この場合、子のことを特別受益証明者といいます。

 

寄与分について

 上記の特別受益とは別に,相続人の中のある者が,相続財産の維持または増加に特別に貢献した場合,その分を本来受ける相続財産に加算して優遇するというのが「寄与分」の制度です。寄与分が認められる場合は,「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合に限定されています(民法904条)。例えば自営業の労務の提供や,被相続人に対する療養看護により相続財産が維持,増加した場合は認められることになります。

 

代襲相続について

相続人になるはずの人が先に亡くなったらどうなるか?

 相続人になるはずの人が先に亡くなった場合はその子(直系卑属)が相続します。これを代襲相続といます。次の場合に代襲相続が発生します。

  1. 被相続人の子が相続の開始以前,つまり先に亡くなっていたとき。

  2. 相続人が民法891条に規定する欠格事由に該当するとき,つまり相続人の資格を失ったとき。

  3. 被相続人に廃除され相続権を失ったとき。

    以上のときには相続人の子や孫が相続人の地位を受け継ぎ相続することが出来ます。

    被相続人に子供も親もいない場合,兄弟姉妹が先に亡くなっているときはその子,つまり甥や姪も代襲相続人になれます。この場合は甥,姪まででその子は代襲することは出来ません。

     相続放棄した場合はその人は最初から相続人ではなくなりますから代襲相続は発生しません。

 実務上は,特に甥姪などの場合,何年も他の相続人と会っていなかったり,面識のない人までもいたりして,遺産分割が大変難しくなることがあります。何十年も前の親同士の兄弟げんかにまで話が及び収集がつかなくなるおそれさえあります。無用な混乱を避けるためにも遺言書を作るべきでしょう。

 

保険金の扱いについて

生命保険金は相続財産に入るか,相続放棄した場合はどうなるか

 生命保険金については,受取人の指定がある場合は被保険者の死亡と同時に受取人の固有の財産になるので遺産分割の対象となる相続財産には入りません。受取人がそのまま受け取ることになります。

 死亡した人が被保険者かつ受取人である場合は,死亡と同時に保険金は相続財産になります。従って遺産分割の対象となります。この場合相続人は,相続放棄すれば当然保険金を受け取ることは出来ません。

 では,保険金の受取人が単に「法定相続人」となっている場合はどうでしょうか。この場合は前述のように,被保険者の死亡と同時に保険金が相続財産に入るというのではなく,ストレートに法定相続人の権利となります。相続人が複数いる場合は法定相続分に従って分けることになります。ですから相続放棄しようが限定承認しようが関係なく保険金を法定相続人が受け取ることができます。東京地裁の判例(昭和60・10・25)においてそのような判断が示され,相続放棄した相続人も受取人が法定相続人となっている場合は受け取ることが出来るとされました。ただし税法上,保険金は「みなし相続財産」となり,相続税の対象となります。

 

連れ子の相続権について

連れ子に相続権はあるか

 相続人の順位についてまず述べます。被相続人の配偶者は常に相続人になります。さらに第一順位が子,第二順位が直系尊属(父母など),第三順位が兄弟姉妹です。上の順位の者がいれば下位の順位の者の相続権はありません。連れ子が相続人になるためには被相続人と法律上の親子関係がなくてはなりません。従って,養子縁組をしていれば相続人となりますがそうでない場合は相続人にはなりません。

 愛人の子の場合も同様で,被相続人と養子縁組をしているかまたは認知されていなければ相続人となることは出来ません。認知は父親が死亡した後でも,その死亡の日から3年以内であれば請求することができます。その子の母親が子を代理して検察官を相手方として認知の訴を提起することが出来ます。

 

胎児の相続権について

胎児には相続権はあるのか?

 民法は例外規定として,胎児はすでに生まれたものとみなし,相続権を認めています。

  たとえば,妻が子供を妊娠していて夫が亡くなった場合,胎児の相続権を否定しますと妻が3分の2,亡き夫の両親がいれば3分の1の相続分となり,その後に生まれてきた子供に権利がないことになってしまいますこれでは子供がかわいそうであるばかりか,一定の親族関係にある者に相続権を認めた法律の趣旨にも沿わないことになります。

 それで,民法は胎児にも相続権を認めているのです。ただしその胎児が将来出生することが前提で,死産の場合は相続権は認められません。胎児には,損害買収請求権,相続,遺贈,遺留分が認められます。

 

 

 

 

 

 

 

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